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INFERNO[インフェルノ]開発STORY

バドミントンラケットの革新的フォルムを生み出した開発秘話。

2016年11月。これまでになかった革新的フォルムを有したバドミントンラケット「INFERNO」が発売された。ゴーセンはこれまでも2段階でしなるガブンシャフト搭載ラケット「ROOTS」やゴルフシャフトメーカーのシャフトを採用した「RYOGA」などユニークなラケット開発を行ってきた。これらの開発DNAを引き継いだゴーセンの新たなるチャレンジ。バドミントンラケットの企画開発責任者である岸本がモノづくりのスピリットを語る。

02プロトタイプ篇

プロトタイプの完成

構想から本格的な開発がスタートして約半年。ついに波打った形状を有した特殊形状ラケットのプロトタイプが完成した。岸本から依頼を受け、ストリンギングテストによる検証を担当した北村は特殊形状ラケットの第一印象をこう話す。

「最初はこの特殊形状に対して戸惑いました。正直なところ、発売を前提にした開発だとはとても思えませんでした。冗談半分の開発かなと思いましたね。ただ、実際にプロトタイプを手にした時に軽く振って感じた振り抜きの良さは確かに開発側の見立て通りでした。聞いたことのないようなスイング音がするし、フレームの強さも感じられる。完成度の高さに驚きました。これまでフレーム幅が厚いのに軽くて強度も高いというラケットは聞いたことがなく、初めて手にした時は既存のどのラケットにも似ていないという印象が強かったです」

ストリンギングテストの重要性

プロトタイプ完成後、一般的な強度試験をクリアし、いよいよ北村によるストリンギングテストがスタートした。ゴーセンのストリンギングテストでは一般プレイヤーが張り上げるであろう適正テンションよりも10%程高いテンションで強度確認をする。このラケット限界値に近いストリンギングテストを同一ラケットで複数回数こなすことにより、設計に問題がないかが確認できるのである。しかし、この段階で一つの問題が発覚した。細ゲージガットを32ポンドで張り上げした時、フレーム内側からの陥没現象が発生してしまったのである。その背景について北村はこう話す。

プロトタイプフレーム4時部分の内側
プロトタイプフレーム4時部分の内側。
細ゲージ、高テンションでのガット張り上げにより、カシメ部が陥没している。

「近年、0.65mmクラスの細ゲージガットの普及によって、ハイテンションでのガット張り上げ時にグロメットのナイロン素材が破断してしまい、ラケットに陥没する折損が多く発生しています。バドミントンラケット全般に言えることですが、こうした部分的な応力には弱いのが現状です。特にユーザーは複数回数張り替えてもグロメットを交換しないケースも考えられるので、ハイテンション対応のラケットを検証する際は特にグロメットに気を配ります」

北村はすぐにこの問題を岸本に報告した。調査の結果、原因は従来グロメットの仕様ではプロトタイプのような幅の厚いフレームの内側への長さが足りず、受け軸であるカシメ部(ラッパ部分)の厚みを作れなかったことにあった。これを受けて北村はグロメットの一部をプロトタイプフレーム専用に再設計するよう求めた。このリクエストを基に、開発側ではナイロン素材を硬めに、グロメットヘッドとカシメを特注して0.1mm単位で厚さを微調整したものを北村と繰り返し検証を行うことで、この問題をクリアした。

「実際に張り上げてみることで破壊試験機では分からない問題が見つかる場合があります。今回のグロメットもストリンギングテストを念入りに行っていなければ見つからなかったでしょう。ゴーセンはガットのパイオニアとしてラケットメーカーの道を歩んできましたが、ストリンギング技術に関しては全国に展開する「張人プロジェクト」をはじめとしたトップクラスのノウハウがあります。ストリンギングを行うことで他の試験では判別できなかったラケットの特性を理解することができる。こうしたノウハウが今のラケット開発にも生きていると思います」

究極のオールラウンドスペックを目指して

これまで、重量、バランスポイント、シャフトフレックス、スイングウエイトなどのラケットスペックについては競技レベルや年齢、性別をイメージして、それに則した複数サンプルを用意した上でヒッティングテストを行うのが通例であった。その中で結果が良好であったものを最大公約化してラケットスペックを決定していくのである。しかしながら、この特殊形状ラケットのプロトタイプのスペック決定は地道なアンケート調査から始まった。当時、プロモーションを担当していた村松はこう話す。

「販売ターゲットのはっきりしている従来品とは違い、間口を狭めてしまうことなく、多くのプレイヤーに体感していただけるようなオールマイティ型のスペックを作りたいとの意向が企画開発担当である岸本から伝えられました。そのために、最新のプレイヤーニーズを知りたいとのことで、性別、競技レベルを問わず、できる限り多くのアンケート調査を行うように依頼されました。当初、特殊形状ラケットについて若干懐疑的であった私も、岸本と話しているとこのラケットを広めようとする本気度が伝わってきたと言いますか、新機軸として将来的にシリーズ化も見据えているのだなといった意図が掴めてきました」

村松は様々なシーンでプレイヤーと接する機会が多い。そして入社当時から今に至るまで岸本をよく知る一人である。だからこそ信頼も厚く、多くのサンプルのヒッティングテストを担当した実績がある。まず、各大会や練習会に赴き、1か月ほどの短期間で600件を超えるアンケート調査を行い、現場意見の集約を行った。

「アンケート調査では1. 現在使用しているラケット 2. 現在のラケットの使用感に満足しているか、3.ラケットを選ぶときに重視するポイントなどを項目に入れました。これは使用されているラケットの傾向をきちんと把握すること、現状のプレイヤー満足度からどのようなポイントに着眼してオールラウンドスペックを作ればよいかという岸本へのヒントになればと考えたためです」

こうしたアンケート結果は全て岸本に集められすぐにデータ化されることとなった。大量に積み重なったアンケート用紙一枚一枚を確認し、データ入力する作業が続く。岸本はこう話す。

「村松をはじめとするプロモーション現場から寄せられたアンケートは今後の開発にも非常に役立つものでした。今回、最も大変だったのは現在使用しているラケットスペックを把握することでした。略称されているケースも多い。更に最新モデルを使用しているプレイヤーばかりではなく、他社の数年前の古いモデルもあったため、重量、バランス、機能等、できる限り丁寧に調べ上げました」

これらのアンケート調査の甲斐あって、岸本は性別や競技レベルに関わらず、プレイヤーがラケットを選ぶときに重視するポイントとして1.重さ 2.バランス 3.打球感の項目に多くチェックが入っていることに気づく。そこで各プレイヤーの使用ラケットから、重量・バランス・打球感の傾向を導き出し、複数のサンプルラケットの作成を製造現場に依頼する。こうしてサンプルが完成するたびに何回もヒッティングテストを行い、理想のスペックに近づけていったのである。

次回「カーボン素材篇」は2017年12月5日(火)公開です。
お楽しみに!

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